=木曽発、ITが地域の明日を担う人々や
企業の新たな可能性の芽となることを信じて=

●Interview

NPO法人
木曽情報技術支援センター理事長

永島 芳晃さん(写真右)
NPO法人
木曽情報技術支援センター副理事長
巣山 幸洋さん(写真左)


「“地域の情報”発信に手応え」
・・・おふたりの故郷である木曽地域でIT事業をスタートされるにあたり、どんな夢やお考えをお持ちだったのでしょうか?

東京からUターンして故郷に暮らすようになり、改めて「木曽はこんないいところだったのか」という認識を持つようになりました。その反面、あらゆる情報が届くのが遅いという不満も持ったんです。そこで個人的にホームページを立ち上げたところ、木曽エリアで最初だったこともあり、全国からの問い合わせの多さに驚きました。「木曽からの情報を、個人じゃなく、地域としてまとめて発信したら、もっといろんなことを、地域にとってメリットのあることができるんじゃないか」と思ったのが、事業のきっかけです。
NPO(特定非営利活動法人)にしたのは、個人でも民間企業でも行政でもなく、同じ志を持つ人たちの視点でITに取り組むことで、より自由に、多くの可能性に挑戦できると考えたから。思い切って声をかけてみたら、同じ考えを持っている人が木曽郡内に予想以上に多かったことに意を強くしました。ちょうど国をあげてITを推進していましたし、木曽も地域としてITに目を向け初めている時期だったので、タイミングもよかった。情報関連では長野県初のNPOとして注目を集めたことも、支援を呼びかける上で励みになりました。
「地域内循環型成長システム」
・・・地域内での人や仕事の循環によって全体の成長を図っていこという点に大きな特徴がありますね。

木曽というエリアにこだわっているのは、ITを通じてここに住み、ここを愛する人たちの力を発掘し、育て、結集し、相互に成長していけるよう、内需の有効活用や、地域へのフィードバックをめざす、言わば「地域内循環型成長システム」を推進していくことが、人口の流出を抑え、地域を活性化していくために欠かせないと考えるからです。
今まで、インターネット接続にしてもホームページ作成にしても、木曽でITに取り組もうと思ったら、名古屋や松本など外から人を呼んでくるしかありませんでした。それでは経費がかかる上に、対応が遅い。だったらここにいる自分たちがレベルアップしようと。いずれは地方にいながら都会と同じことができるようになるのも、夢じゃないはずです。



・・・具体的な事業内容をお聞かせください。

第1に、木曽の自然や文化、産業といった情報を集約して発信すると同時に、外からの声を木曽へ還元すること。これはポータルサイト「木曽路ドットネット」によって進めています。現在29万アクセス(平成13年7月データ)を記録していますが、中でも国道19号の道路情報掲示板は好評ですね。また8月にメールマガジン「木曽路NOW」を創刊し、地元出身者に木曽の魅力を再認識してもらえるような情報を発信し続けたいと考えています。
第2に、地域にITの芽を育てていくこと。現在、IT推進に積極的な5町村のIT講習会に講師を派遣しています。
そして、第3はホームページの作成です。これに関しては、すでにいくつか実績を上げていますが、正会員やスタッフの間でコンペをし、選ばれた者が仕事を請け負うという方式にしており、自分たちのレベルアップにもつながっています。
こうした事業を通じて、自然と共生するまちづくり、魅力ある地域の創造に貢献できるものと確信しています。

「地域のボトムアップ」「自らのボトムあっぷ」
・・・時代の波に乗った快調な滑り出しですね。

いや、行政も企業もITへの期待は高いのですが、まだ実態が見えないので様子見の構えなんですね。しかもこの不景気で民間企業に余力がない。どこも資金面での支援には足踏み状態です。金融機関も、NPOへの融資にはまだ非常に慎重でして、運営資金の捻出に頭を痛めているというのが現状なんですよ。今は耐える時期と考え、ひたすら実績作りに努力しています。


・・・IT活用によって何ができるかが、地域の中で具体的に見えてくると、反応が変わってくるのでしょう。リーダーシップを担う役割は大きいですね。

今のところ、地域で唯一の存在ですから責任の大きさは感じます。やっとITが始まったばかりの地域と、今日の標準が明日には標準ではなくなるほど早い進展を見せている都会との意識や技術のギャップを埋めながら、自分たちも技術レベルを日々向上させていかなくてはと思いますね。
「地方にこそ必要なブロードバンド」
・・・都会と地域のギャップという点で、高速通信網への期待が高まりますが。

残念ながら木曽はまだADSL、フレッツISDNのサービス提供エリアになっていません。木曽広域の光ファイバー網も民間には開放されていない状況です。本来、地方にこそ必要なブロードバンドだと思うのですが。そういうインフラが木曽に必要なんだという意識を育てていくのも、NPOである我々の役目なのかもしれません。
「志を結集して力に」
・・・最後に、IT革命といわれる時代の中、これから変革や個性ある地域創造にチャレンジしようとしている方々にメッセージをいただけますか。

この事業を始めてみて、どこの地域にも同じ志を持っている人は必ずいるんだということを実感しました。その力を結集することにより、きっと何か大きなことができるはず。「地方だからできない」のでなく、「地方だからこそ価値あるもの」に挑戦する意義は大きいと思います。後継者として地域を背負って立つ若い世代の人たちにこそ、ぜひ元気に思い切ったことをやってもらいたいですね。

《Profile》
木曽情報技術支援センターは平成13年4月NPO法人として業務開始。
永島芳晃理事長は木祖村、巣山幸洋副理事長は楢川村出身。
http://www.kisoji.net/
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