―「世界中の子どもが幸せになってほしい」
大きな夢を実現していくために、
情報を発信し続ける―

●Interview

塚田こども医院/小児科医

塚田次郎さん


「蓄積した情報を新しい形に」
・・・まず、どうしてHPを開設されたのですか?

1990年7月に開院して、その翌月から「こども通信」というペーパーを発行し始めました。それをほぼ毎月、来院される患者さんに配付してきたのです。内容は、その季節で注意したいこと、感染症の情報、医院のニュースや予定などです。発行し続けるうちに、次第に情報がストックされていきました。そこで、来院されない方にも「何か新しい形で発信できないか」と考えたのです。それが開設のきっかけでしょうか。

・・・こども通信以外にも病気の説明、予防方法など70〜80種類もパンフレットがありますね。

ええ。限られた診療時間では説明したつもりでも伝わらなかったり、患者さんも質問できなかったり…。そこで、家でじっくり読んでいただけるようなパンフレットをつくっていたら、こんなに増えてしまって(笑)。他にもHPでアップしたものをプリントアウトして、待ち合い室に置いてあります。例えば、1999年8月にアップしてから1日に3〜4件は質問が来ます。当医院の患者さんでない方がほとんどですが、その返答の中から選んでプリントしたり…。
昔なら掛り付けのお医者さんに言われたことをそのまま受け取っていましたが、最近では患者さんの知識も広がり、「医療に対する疑問を誰かに聞いてみたい」という欲求が高まったようですね。「こんな薬をもらったけど」とか、「この診断結果でいいのか」など様々な質問をいただきます。実際に診察していないので解答に限界がありますが、それでも安心されるのか、よく質問に来られるリピーター(?)もいますよ。
「ページの向こうの笑顔が嬉しい」
・・・では、HPを開設して「よかった」と思うことは何でしょう?

そうですね、アクセスしてきた方の顔が見えた時でしょうか。先程お話ししたQ&Aコーナーに「生後3ヶ月で発熱したのですが、風邪と診断されて…」というメールをいただきました。でも生まれたての赤ちゃん程発熱しないのです。そこで、まず疑わなければならないのが髄膜炎。心配だったので「もし、『髄膜炎ではない』という明確な診断がなければ、その検査をお勧めします」と返事をしました。そうしたら、やはり髄膜炎を起こしていたのです。幸いにも発見が早かったため大事には至りませんでした。髄膜炎は脳内の病気ですから、発見が遅れると後遺症を残したり、最悪の場合は命を落とします。お母さんからお礼のメールをいただいた時、その向こうに喜ぶ顔が見えました。とても嬉しかったですね。また、世界中の日本人からメールをいただきます。「YAHOO!」で検索すると私のHPがトップにヒットするキーワードが多く、そのせいでしょうか、アメリカ、ロシア、香港…国内では北海道から沖縄まで来ますね。特に海外だと医療事情も日本と違いますから不安も多いのでしょうね。

・・・逆に苦労された点は何でしょう?

開設時はHPの作り方などまったく知らなかったので「どうしたら作れるか」という段階から始めました。どこのプロバイダーにするか、どんなソフトを使えばいいか、コンテンツはどうするか…それが一番苦労しましたね。
あと「ぬかるみ」にはまってしまったことでしょうか(笑)。日誌のコーナーを更新しますから、最低でも毎日30分はコンピュータに向かっています。日誌を楽しみにされている方も多いので休めません。質問の返答も1件で1時間くらいかかる時があります。ですからスタートの計画は大切だと思いますよ。更新できないボリュームではHPを維持できませんから。

「母親がハッピーなら子どももハッピー」
・・・たいへんそうですが、楽しそうですよね。でも、来院される患者さん以外へのサービスなので医院へメリットがないのでは?

実は、このHPは医院の宣伝用ではなく「子育て支援」のために作ったのです。私には「世界中の子どもが幸せになってほしい」という夢があります。そして「小児科医として、今自分にできることは何だろう」と模索した結果、子どもたちを育てている「母親を支援しよう」と考えました。
私は学生結婚で、大学在学中に子どもをもうけましたが、あずかってくれる乳児保育園がなかったのですね。家内は働いてたし、頼める知人も近くにいなかった。それで大学内に自分で保育園を作ってしまいました。最初は3人でしたが、最終的には10人以上の子どもたちをあずかりました。そこで気付いたのは「子育ては、おもしろい!こんな楽しいことを女性だけが独占していいものか?」ということです。
でも日本の現状では子育ては母親ひとりに押し付けています。子どもがハッピーになるには、母親もハッピーでなければいけません。子育てによって母親は仕事を続けられなかったり、社会との関わりも希薄になったり、様々な負担が生じています。
ですから、少しでも母親たちを助けたい。そこから子どもたちが幸せになればいい。大義名分を掲げれば「夢のためにHPで子育て支援をしている」ということでしょうか。

・・・それがHPを作る原動力なのですね。

ええ。大学時代につくった保育園の名前は「わたぼうし」といいます。「このような施設や考えが広がっていけばいいなあ」と付けたのです。今は、院内で病気中の子どもをあずかる「わたぼうし病児保育室」にも使っています。こちらは利用者数が増えたため、ただ今増築中です。

・・・実際に診察する患者さん、HPへの来訪者、その両面から子育てを支援しているのですね。では最後に、新しくHPを作られる方へメッセージをお願いします。

やはり自分で更新していくことが大切だと思います。発信したいことが人任せだとどうしてもタイムラグが生じます。「無理なく、ずっと続けられるHP」を計画することがポイントだと思います。
《Profile》
●塚田次郎(つかだじろう)
1981年自治医科大学卒業、同年医師国家試験合格。新潟市民病院にて臨床研修、新潟県立坂町病院小児科勤務を経て、1990年上越市栄町にて塚田こども医院を開設。日本小児科学会認定医。日本小児科医会「子どもの心相談医」

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