―ITが支え育む「人に優しい」地域づくり
福祉、教育の分野で活かされるITとは!!―

●Interview

NTT東日本長野支店 法人営業部
ソリューション営業担当

中村秀則さん


新しい公共交通のかたち「デマンド交通システム」
・・・便利で人に優しい地域づくりの一環として、話題にされることの多い「デマンド交通」。御社では「デマンド交通システム」に積極的に取り組んでおられるそうですが、まず「デマンド交通」の概要を教えていただけますか。

簡単に言いますと「地方における公共交通問題を解決するシステム」です。「乗り合いタクシー」をイメージするとわかりやすいと思いますが、バスのような低料金で、タクシーのような「戸口から戸口まで送迎」の便利さを併せ持つ新しい公共交通システムを、最新のITを活用して実現する取り組みなのです。
赤字バス路線の休廃止の自由化や、福祉バス、スクールバス等への自治体の負担増大等、公共交通はさまざまな問題を抱えています。こうした状況の下、私どもは「デマンド交通システム」を通じ、「利用者主導型の新しい公共交通システム」を提案し、各地で構築実績を重ねています。

・・・「デマンド交通」の導入により、どんな方々がメリットを受けるのでしょうか。

「住民」「行政」、そして輸送業などの「事業者」がそれぞれに利益を得る、つまり「三方一両得」が実現します。
地域の住民はタクシーを乗り合いで利用することにより、自宅から目的地へ安価で便利に移動する交通手段を日常的に確保できます。特に交通弱者といわれる高齢者にとっては、外出機会の増加による健康増進といった副次的効果も期待できます。
自治体は赤字路線バスへの補助金を削減できるとともに、地域住民への高付加価値の行政サービスも提供できます。
また、事業者は待機車両、遊休車両を有効に活用することにより、安定した収入を確保できます。
さらに地元商店街にとっても、住民が市街地へ足を運ぶことによる集客が見込まれ、町全体の活性化という相乗効果が期待できるわけです。
長野県初の「デマンド交通」が富士見町でいよいよスタート
・・・長野県では、この4月から富士見町で運行が開始されるそうですね。貴支店はどのような役割を果たされたのでしょうか。

平成14年に全国で最初に導入した福井県小高町のケースをはじめ、約10の先行導入事例で培ったノウハウを元に、地域特性やニーズ、運行路線、サービス内容、収益性、コストなどをきめ細かく検討する「FS(フィージビリティスタディ)調査」を行い、システムの構築ならびにシステム運行までのコンサルティングを担当させていただいております。
富士見町のケースでは、町の商工会が事業主体となり、諏訪バスと富士見高原タクシーが輸送業者となっています。町内を3エリアに分け、9人乗りジャンボタクシーが平日の日中、1時間に1本のペースで運行しますが、1時間前までの電話予約により、利用者の自宅戸口に停車し、病院、役場、駅等の目的地まで一律300円で利用できるシステムとなっています。富士見町の人口は約1万5千人ですが、すでに約1300世帯が利用登録しており、この3月から始まっている試験運行もきわめて好調です。
長野県内で最初の事例として、今後への試金石となりますので、運用開始後も経過を見守りたいと考えています。


・・・「デマンド交通システム」に関し、今後の可能性と展望をお聞かせください。

多くの自治体が抱えている公共交通システムの悩みを解消するシステムとして、「デマンド交通システム」には全国から多くの引き合いをいただき、導入への機運が高まっている状況です。運行範囲の設定、他の公共交通機関との連携など、地域ごとのニーズに柔軟に対応した運行を提案するとともに、配達、安否確認といった多目的サービスの提供も検討していきたいと考えています。
教育の情報化推進にも大きく貢献
・・・「デマンド交通」のほかにも、福祉や教育、あるいは地域の活性化のためにIT活用の可能性は無限にあるといわれていますが、貴支店が独自に推進しておられる取り組みはありますか?

長野市は冬季オリンピック開催にあたり、全国の地方都市に先駆ける形で光ファイバー網が整備された地域です。この環境を活かし、長野市教育委員会と当支店は「教育の情報化推進共同研究会」を組織して、ブロードバンドネットワークを教育分野で活用する先進的な取り組みを進め、現在にいたっています。
具体的には、回線・パソコン機器等ハード面の整備、運用ソフト面の整備を行うとともに、現場の先生方に協力してもらいながら、実際の授業で使えるオリジナルコンテンツを多数制作し、教育現場のIT化を支援してきました。さらに、ITスキルを持つスタッフによる「IT技術サポート」と、実際に授業の現場で先生の代わり、あるいは先生の補助として児童・生徒と触れ合いながら授業を支援する「メディアコーディネータ」という2つの柱で、教育現場の実情に即した細やかな支援業務を展開しています。6年にわたる長野市での実績が評価され、今年度は伊那市、千曲市でも同様の取り組みが稼動しています。
国のe−Japan施策に基づき、教育現場のIT化は必須の課題となっています。各地のインフラの状況や現場のニーズを見きわめながら、教育の情報化推進に貢献すべく、今後も研究を進めていきたいと考えています。
この他にもITを活用したさまざまなサービスの提供を通じ、地域の皆さまのお役に立てますよう努めてまいりたいと思います。どうぞご期待ください。
《Profile》
●中村秀則(なかむらひでのり)
○東日本電信電話株式会社 長野支店
 法人営業部 ソリューション営業担当

現在、ビジネスモデルの特許申請中である「デマンド交通システム」をはじめ、行政文書管理システム、電子入札システム、福祉総合情報流通システム等を提案し、運用のコンサルタントを行っている。教育の情報化推進に関する長野市と共同研究は、全国でも先進的な取り組みのひとつ。

長野市新田町1137-5 TEL.026-225-3307
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