―「食育」や「栽培履歴」が取り沙汰される現代こそ
お客さまに安心していただくための
「情報発信」が不可欠―


●Interview

有限会社神林カントリー農園
代表取締役
忠 聡さん



販売業ではHPを持つことが当たり前
・・・では、HPを立ち上げたきっかけをおしえていただけますか?

私どもは首都圏のお客様が中心ですから「HPくらい持ちなよ」と、よく叱られていたんです(笑)。それでパソコンに興味を持っている社員が独学で2年前につくってくれました。
でも最初、私自身は正直、興味も感心も無かったんですね。当時から通信販売もやっていましたが、自社が扱っている商品がお米や餅などでしょう。このような商品構成ですから、お客様は年輩の方が多いのです。その購買層にインターネットからの呼び掛けが通じて、売上げに結び付くとは思えなかった。ですからネットビジネスを本格的に展開するより、いっそ「農業の実態を発信」するHPをつくろうと考えたのです。

・・・農業の実態を発信する?

ええ。私たちの取組みや作業の様子、また、現在の農業そのものの姿をHPで紹介したいと。写真などを豊富に掲載して目からもわかるようにしました。その内に、社会背景から「食育」や「履歴」が取り沙汰されるようになったので、お客様に安心していただくためにも「情報を発信する」ということが重要になりました。
でも、最初の1年はメンテナンスもままならず、いつ見ても同じようなページでした。しかし、せっかく立ち上げたし、「情報発信」が目的でしたから、何とかしようと工夫を重ねて来ました。今年になってから、私たちの日々の仕事を垣間見れるような「日記コーナー」も開設しましたよ。

・・・話は戻りますが、首都圏では中高年層もよくHPをご覧になっていますよね。

ええ。HPを開設して感じたのですが、皆さんインターネットで色んな情報を探しています。販売業ではもうHPを持っていることが当たり前じゃないですか。特に当社のようにお客様が首都圏に集中していて距離が離れている分、「どんな所で、どんな風に作っているのか」情報を伝える必要があります。
また、問合せに対して言葉で答えるよりは、写真付きのHPを見ていただいた方が深く理解していただけますし、早いですね。しかも最近では、電話で問合せる前に、ご自分でHPを調べているようですから。
稲も実り、ちょうどこれから新米や餅の出荷シーズンです。HPも浸透してきたので、知っていただくことで、さらに販路が拡がるといいですね。
意外な人たちが見ています
・・・羊牧場など様々な事業を展開されていますよね?

ええ。基本は稲作なのですが、最近では皆さんお米を食べなくなっていますし、多角化を選ぶしかなかったですね。
お米は、つくり方や肥料などで差別化して会員の皆様に年間を通じて販売しています。また、羊の牧場というのは、野菜市場も経営しているのですが、ただ野菜を売っているより羊がいたら楽しいかなあ、と(笑)。やはり、なんでもおもしろい方がいいでしょう。
このように、いかに商品に付加価値を付けるかが今後の課題なのでしょうね。

・・・HPを開設されて反響はいかがですか?

意外だったのが、農業関係者の視察が増えたこと(笑)。HPで見つけられて、問合せが来るんです。通信販売のお客様も年々増えていますし、また、私たちの商品を扱う小売店の担当者がよく利用しているそうです。HPを参考に商品を理解されるんですね。本当に色々な人から使われていますね。
最近で一番のニュースは、粟島浦村の小学校から稲作をおしえてくれと依頼がありました。粟島では昭和39年の新潟地震以来、稲作がほとんど途絶えてしまって、栽培法方がわからないのですね。たまたま知人がそこで教師をしていたこともあって、小学生が栽培している稲を撮影して送ってきますよ。メールで営農相談です(笑)。今は離島でも簡単にやり取りができるので便利ですね。
インターネットはその業界なりの役立て方がある
・・・これからHPをどのように使っていきたいですか?

そうですね。先程もお話しましたが、近頃は取引先から「栽培履歴」の問合せが急激に増えました。既に単価の高い果物などにはICタグが付けられていますよね。高級なものにはメリットがあるでしょうが、米や野菜はまだそこまでできません。でも、HPで公開すれば、消費者は知りたい時に情報を得ることができます。消費者には「知る権利」がありますし、作り手も隠す必要はないし。逆に隠すのはおかしいことでしょう。
HPからお客様を得ることも大切ですが、こういう時代だからこそ「農業を、自社を理解していただくこと」が売上げに繋がると思います。私たちのような業界は「信頼性を得る」ために、そして会社の「イメージアップ」のために、今後HPは大いに役立つのではないでしょうか。
また、お客様の要望をより把握するために、いつかは双方向にしたいのですが、そうなるとこちらも体制を整えないといけませんね。

・・・HPの運営面で気を付けていることはありますか。

よくイベントを開催するのですが、電話で問合せがあった時、受けた人間が内容を知らなければ返答できませんよね。ですから、HPで公開したことは詳細まで社員全員が把握していないといけません。公に流している情報を社員自身があやふやな回答をしては、逆にマイナスのイメージを与えてしまいますからね。

・・・これから、新しくHPを作られる方へアドバイスをお願いします。

「広く公表する」という気持ちがなければ必要無いかもしれませんが、「私たちの会社はこんなことをしています」と世の中に投げ掛けたいのであれば、やはりHPは必要です。将来、お客様になる可能性がある予備軍的な方にもアピールできますよね。
また、メールが便利なんです。映像も送れますから、お客様にどうしても伝えなければならないことも、詳しく、すぐ対応できますし、商用にもよく利用します。インターネットには「その業界なりの役立て方」があると思います。ぜひ、利用してください。
《Profile》
●忠 聡(ちゅう さとし)
○有限会社神林カントリー農園 代表取締役
「農業生産法人(有)神林カントリー農園」は新潟県の最北部、岩船郡神林村にあります。周囲を朝日連峰、飯豊連峰、磐梯朝日国立公園に囲まれた、美しいコシヒカリの故郷。お米の他に、昔ながらの杵と臼で丹念につきあげたお餅、味噌、梅干しなどを販売。商品のお問い合わせはHPをご覧ください。

http://www.cokky.ne.jp/country/
copyright(c)2003JapanTelecomUsersAssosiationNagano