『eこって柏崎』は、柏崎商工会議所と会員が立ち上げた『異業種混合型ポータルサイト』。本気でeコマースに取り組む企業を支援する「実践型プロジェクト」だ。

●Interview

柏崎商工会議所
中小企業相談室会員サービス課長、経営指導員

会田 宏さん


大手資本や海外製品に押されっぱなしの企業が奮い立つ!!
・・・まず、サイト開設のきっかけは?

『eこって柏崎』のオープン前、柏崎市内には365ほどの企業がHPを持っていました。しかし、活躍している企業はほとんど聞かなかった。当時は多くの企業が「HPさえあれば売れる」と思い込んでいて「見てもらう、運営する」ことを考えていませんでした。そこでeコマースを指導してくださる先生を招き、'03年の4月からセミナーを開催しました。大盛況で90名も集まり、しかも先生が「サイトを開設して来年はベンツに乗ろう!」と切り出したものだから企業さんも「ワーッ!」とノっちゃって(笑)。突然なので商工会議所も予算がなかったのですが、企業さんが「自力でもやる!!」と最終的に34社が持ち寄って始めました。とにかく勢いがあった。やる気があった。
 参加した皆さんは大手資本や海外製品に押されっぱなし。将来に不安を抱えつつ、新しい販路を探していたのでインターネットは"有力な道"だったのでしょう。

・・・光明が見えたわけですね。そのために企業さんは経営革新までされたそうですが?

意識しなくともHPを構築するうちに自然と変わるはずです。アクセス件数を伸ばす仕組みがわかれば、後は見に来てくださったお客様に「どう思いを伝え、どう感じて、買っていただけるか?」購入後は「いかにリピーターになっていただくか?」です。そのために「自社はどの分野に強いか?」「売る相手は誰か?」「強い経営ができているのか?」を見直す必要がある。その辺が経営革新であり、私たちが今までやっていなかった部分でした。
 HPなら検索サイトから「どのキーワード」で入ってきた人が「どんな動き」をしたかまでわかるので、ページや商品の"強さ弱さ"が見えてきます。実際の商店でも売れ筋を目立つ場所へ並べますよね。HPも訪問履歴からまめにメンテナンスしているところは成長しています。皆さんインターネットと店舗を分けて考えがちですが、実はバーチャルもリアルも同じ。結局は公開するのも"人"、見る相手も"人"なのです。

・・・今までの成功例や記憶に残る出来事は?

まず小竹食品さん。お土産や食品を扱っていますが、奥さんが一生懸命。参加にあたって親戚縁者、子どもの友達までメールしまくり、何と5日目で注文が来ました。また『とんねるずのみなさんのおかげでした』で「元モー娘。」の小川麻琴さんがお土産にこちらの笹団子を持っていったのです。貴さんが「おいしい!!」と食べてくださって、その晩は回線がパンクしました(笑)。HPからのお客様はだいぶ逃がしましたが、電話注文が殺到。その状況に、関心が薄かった社員さんも奮起し、社を挙げてHPに取り組み始めました。そうそう、av exから注文が来た時にも驚きましたね。

・・・浜崎あゆみさん、倖田來未さんがいる?

キャンペーンに使いたいとのことでしたが、奥さんはavexを知らなくて『どんな会社?』と商工会議所に連絡が来ました。こちらもあのavexと結びつかなくて調べたら今をときめく会社じゃないですか(笑)。インターネットでは、こんなことが次から次へと起こる。本当にドラマチックです。一躍有名になった奥さんは、今では年に30回も全国で講演しています。教える立場になっちゃった(笑)。
 最近大手スーパーの参入で地域のスーパーが閉店しています。納入先が無くなり同業者が看板を下ろし始める中、小竹さんはHPの受注が貢献して生き残っています。
日本のどこかに自社を必要とする人がいる。
部品製造のテック長沢さんも印象深い。全国から注文が集まりますが、その都度商工会議所に信用調査など相談が来ます。こちらは「基本的に断らずにやる。やると決めたら約束を必ず守る」という姿勢の会社で、厳しい業界で確実に売上を伸ばしています。海外に仕事を奪われても「日本のどこかに自社を必要としてくれる人がいる」のです。日本でしか出来ない技術を長沢さんはずっと追い続け、努力し続けている。頑張れば製造業にも"生きる道"があると教えられました。
 また、日本人はブランドや皇室御用達など"お墨付き"と証明したのが森山呉服店さん。「江戸一」という祭用品のブランドを扱っていますが、オープン後は、よさこいチームから注文が殺到し、シーズン中は祭一色。ブランドはHPで強いですね。

・・・企業さんと商工会議所さんが一体ですね。

サイトを開設したらそれっきりではなく"商工会議所も一緒に動く"ことが基本です。そうでないと、私たちも覚えないし、対処できない。信用調査などの相談や講習会を毎週開いて技術指導をするなどのサポートを続けています。また、目に見えて成果が上がると皆さん頑張り、活力が生まれます。それが本当に嬉しい。

・・・このような成功の秘訣は何でしょう?

私自身は成功したとは思っていません。何故なら、ITは目まぐるしく変化するのでどこまで行っても完成しない世界ですから。"常に新しい目標"に切り替えないとそこで終ってしまいます。また、まだまだ皆さんに"余地"を感じるのです。ある方に、「柏崎は成果が上がっているけど売る構えが無いね」と指摘されました。確かにサイトに参加しているのに自社のHPを持たない企業や実売経験のない企業も有ります。これには、インターネット制作に求められるスキルが年々高くなっていて企業主が追いつけないという背景もあります。しかし、何がわからないのかを聞く事はできますし、私やメンバーの中でできる限りお答えできると思います。とにかく一歩でも踏み出して欲しい。また、作るのは専門会社に任せてもいい。しくみを伝える内容を知ってさえいれば、制作はちゃんと指示できますから。
身近にいるお客様にもファンになって頂く
・・・サイトをリニューアルされましたね?
9月11日、大幅にリニューアルしました。まず、サイトの中でも頑張っている企業をトップページにド〜ンと出しました。お客様も便利だし、その企業がサイトを牽引してくれます。また、『お花見インフォ』に参加してから地域の掘り出し物情報を出せば出すほど人が来てくれると感じました。そこで「地域情報のコーナー」も設けて有ります。HPのお客様は、日本のどこにいるかわからない人と思いがちですが"身近にもお客様はいる"ことを忘れてはいけません。






・・・それでは最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

個人でも、企業でも地域の商工会議所を利用してはどうでしょう。インターネットは顔が見えないので、どうしても"疑い"から入ります。でも商工会議所のサイトなら信用面で貢献できると思います。また、従来のマスメディアが"網"で魚を獲るようなものならインターネットは"釣り"です。お客様が好むエサを垂らして確実に一人ひとりゲットします。行動し努力すれば必ず成果がついてきますから、構えずにどんどんやってみることだと思います。
《Profile》
●eこって柏崎
全国的に注目される超優良サイト。会員数72社。('06年8月末現在)。アクセス数、月平均2万5千。今年8月に過去最高4万件を達成。昨年度までの売上、約3億7千4百万円('0312月〜'06年3月)。
http://www.e-cotte.com/
新潟県柏崎商工会議所内
TEL:0257‐22‐3161
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