地方のICT戦略21
1920へ
震災3ヶ月後にオープンした『がんば716ショップ柏崎』に注文が殺到! 超優良サイト『eこって柏崎』を構築した商工会議所と被災しながらも頑張った会員企業が大きな成果を生んだ。
柏崎商工会議所

柏崎商工会議所
●Interview
柏崎商工会議所
業務課課長

会田 宏さん




地域経済を動かさなければ!商工会議所ができることは何か?
・・・会田さんは2回目の登場となりますが、今回は中越沖地震後に立ち上げたサイト『がんば716ショップ柏崎』(以下『がんば』)についてお伺いします。まず震災直後の状況は?

 中越沖地震はM6・8、震度6強で、先に起きた中越地震に匹敵します。被害地域は住宅・商店・工場が集中する市街地が多く、街の景色は一変しました。しかし一部の鉄道を除いて道と港は機能したので流通面のダメージは少なかった。食料や日用品は市外から入るので生活に支障はありませんが、地元企業が「物を売る」場が損なわれた。つまり地域経済の動きがピタリと止まってしまったのです。


・・・それで『がんば』が立ち上がった?

 県外の方から「ボランティア、義援金の他に地元産品を購入するという第三の支援方法もある」とアドバイスをいただいたり、ネットを通じて酒屋さんに「つぶれた缶ビールでも良いから買う」と注文が来たり、歌手のKokiaさんが『私にできること』という応援ソングを作ってくださったり・・・。
私たちも震災直後から会員企業を訪問し、被害調査や要望を取りまとめていたので、その状況下で「商工会議所としてできること」を考えました。幸い地域ビジネスサイト『eこって柏崎』のノウハウがある。開設して4年4ヶ月で13億円の売上を生みましたから、ネットを活用すれば店舗や工場は壊れたままでも地域経済を動かせると決断しました。
  『がんば』のオープンは10月16日。震災のちょうど3ヶ月後です。それまでに企画立案、正副会頭会議の承認、サイト構築、参加企業への説明・講習、運送会社との調整・発送システムの開発などショップ運用の仕組みを作り上げました。そしてパート職員の採用、マスコミへの周知手配、オープンイベントの企画・開催を経て47社200アイテムでスタートしました。
前例のない一大事業
殺到する注文にパンク状態
・・・商工会議所が通販を行う形態ですよね?

 はい、今回は特別です。全国でも前例がありません。参加企業が被災しているのでなるべく負担を減らそうとオープン後も注文窓口、入金確認、運送会社への発送連絡、参加企業への発送指示、メルマガの作成・送信、売上分配、Web管理まで商工会議所で引き受けました。しかし途中で大変な状況になってしまって・・・開設時は月売上200万円を想定していましたが、マスコミや柏崎市内に工場のある大手企業、全国の商工会議所会報などで宣伝していただいたら、予想以上に注文が殺到したのです。しかも各方面から「パンフレットを作って欲しい」と要請があり、配布したらファックス注文も急増。文字情報をデータ化するためPCに入力し直すという作業も増えました。
  当初職員2名、パート1名の体制でしたが職員を6名、パート2名に増員しても間に合わない。しまいに他の課にまで手伝いを頼むようになりました。この数字を見ていただくとわかりますが、10月16日〜11月30日の1日の平均注文数は30点です。それが翌月には114点、翌々月には241点、12月半ばでは724点です!1日にですよ!?電話は鳴りっ放し、注文書用の出力紙が数十センチも積もり、深夜2時が運送会社へ手配するリミットなのですが、みんなで必死に作業してもギリギリでした。


・・・嬉しい悲鳴というより戦場のようですね。

 それで仕方なく12月23日、買い物カゴ停止という非常手段を取りました。参加企業を緊急招集し、『がんば』閉鎖期間中は各店からの購入を呼び掛け、私たちの業務を参加企業にも分担していただくお願いをしました。また正月明けから1日の受付注文数を決め、達したら閉店することにしたのですが、初日は15分で閉まり、「買い物中に閉まった。ひどすぎる!」などお叱りも多数受けました。『がんば』は非常措置なので6ヶ月限定でしたが、年末年始スタッフが休めたのは元日だけでしたね。
  最終的に販売実績だけでいえば参加店からの直接販売も含めて1億2、160万円。それも大きな成果でしたが、何より被災した企業が全国から買っていただく「喜び」を得ることができました。家も店も壊れ、生活基盤を失った中でしたから、みな一様に「嬉しい!」と感激していました。ホームページさえ持っていなかったのに頑張って勉強し、ネットショップの経営に目覚めた企業もあります。
培ったノウハウは新たな財産
半年の講習会で売上91%増
・・・その後『がんば』はどうなりました?

 現在は個別受注・決済のモール方式へ転換して継続しています。私たちは運用から身を引きましたが、『がんば』によって新たなノウハウを得たので各種講習会を行うなど支援しています。実際に震災1年前、商工会議所主催で「経営革新塾」を半年間開いたら、その間不参加企業は売上平均が落ちたのに、受講した企業は91%増でした。しかも参加14社中3社が年末商戦の12月に1、000万円を超えました。『がんば』は復興支援の一環ですから善意による購入が多かった。それを自立経営ができるようにネット活用力を本物にしなくてはいけません。最終目標は、この不況を乗り越えるためにも、強い柏崎になるためにも1社1社がネットで成長すること。商工会議所はそのサポートをしていきたいと考えています。

・・・それでは最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いいたします。

柏崎を応援してくださった皆様、お客様にこの場を借りて心からお礼を申し上げます。そして『がんば』の成功は参加企業の方々、スタッフの頑張りがあってこそと感謝しています。しかし復興はまだ終わってません。かの「えんま通り」では震災のダメージが大き過ぎて『がんば』にも参加できない企業もありました。最近になってやっとその中の2社が参入しました。
まだよちよち歩きの企業が多いのですが、お客様に喜ばれるショップ作りを目指していきますので、これからもどうか柏崎をよろしくお願いいたします。

《Profile》
●柏崎商工会議所
『がんば716ショップ柏崎』は2007年7月16日に起きた新潟県中越沖地震からの復興を目指して頑張る柏崎の商業・サービス業者のサイト。47社(2009年1月末日現在)の企業が参加している。
http://www.ganba716.net/

●『eこって柏崎』は全国的に注目される超優良サイト。会員数77社(2009年1月末現在)
http://www.e-cotte.com/

copyright(c)2003JapanTelecomUsersAssosiationNagano