=地域のIT推進の拠点として、最先端の設備と情報を提供=


●Interview

長野市フルネットセンター
拝野 邦広さん
(長野市企画調整部 情報推進課 課長)
「市民の暮らしに身近なIT施設」
・・・国の施策として地域のIT推進が行われるなか、フルネットセンターのような中核施設を持つ市町村は、全国でもまだそう多くないと思います。オープン3年を経て、どのような成果が出ておりますでしょうか。

長野市フルネットセンターは、行政サービスの充実と高度情報化、福祉・教育分野のマルチメディア化による市民生活の向上、そして人材育成を通じた地域産業の振興を目的に設立されました。フルネットというのは「フルサービスネットワーク」の略で、いつでも、どこでも、誰でも利用できる情報サービスを意味しています。長野冬季オリンピックでは、システムの一部を利用し、最先端のマルチメディア技術と光ファイバーケーブルによる情報通信ネットワークを駆使した、世界でも例を見ないハイテクオリンピックの開催に貢献することができました。当時、オリンピックとして初めて運用されたVOD(ビデオオンデマンド)をはじめ各種のマルチメディア設備は、現在一般に開放され、誰もが自由に体験利用できるようになっています。
開館以来、すでに65,000人の方々が来館し、マルチメディアを体験していただいています。また、初心者を対象にしたパソコン教室や長野市主催のIT講習会の会場としても利用されていることから、市民の皆さんが生活の延長上でITを体感できる身近な施設として、存在が定着してきたと思いますね。
「目的に応じた多彩な利用法」
・・・施設の概要をお聞かせいただけますか?

1階はコミュニケーションゾーンとして開放され、インターネットやVODなどのマルチメディアを無料体験できるスペースになっています。200インチのスクリーンを供えたマルチメディアシアターや9面マルチビジョンもあります。
2階はサーバーが配置されているマシンゾーン、いわばこの施設の心臓部にあたります。
3階には、高性能のデジタルカラーカメラや音響設備を供えたスタジオや映像編集室、マルチメディア編集室があり、デジタル映像やホームページコンテンツを制作していただける有料のスペースです。


・・・どんな方々がご利用になっているのでしょうか?

1階は子どもさんから高齢者まで実に幅広い層の方々が気軽に利用しておられますよ。学校帰りにゲームやインターネットを楽しみに立ち寄るという人もいれば、ビジネス関係の資料をインターネットで検索していく人、パソコンの使い方をマスターするために来る人など、長野在住の外国人の方々など、用途や目的も非常に多岐にわたっていますね。リピーターが多く、誰でも自由に利用できる点が好評をいただいています。
ただ、残念ながら有料利用に関しては、現時点ではまだ十分活用されているとは言えません。マルチメディアシアターを利用した研修会やプレゼンテーション、企業のPR映像の収録・編集など、活用の可能性はいろいろあると思いますので、ぜひ積極的にご利用いただきたいですね。
「教育に生かすマルチメディア」
・・・こちらの施設の大きな特徴のひとつに、マルチメディアを教育に活用していくという取り組みがありますね。

ええ。長野市立の小中学校68校に設置したVOD端末やパソコンを光回線で当センターと結び、マルチメディアを使って授業を行うという先駆的な研究を、NTT東日本長野支店さんのプロジェクトチームと長野市教育委員会、そして私ども情報推進課の共同で、平成10年度から行ってきました。
この研究では、マルチメディア利用の可能性を実際の学校教育に即して検討するために、現場の先生方にも加わっていただき、実践的な教材コンテンツを制作しました。体育、理科、社会など、ほとんどの教科で動画教材を作成し、VODシステムを利用した授業を展開しましたが、教材の共有化による授業までの準備の効率化、見たい部分を繰り返し確認できることによる生徒の学習意欲及び理解度の向上、また、先生たちのパソコン技能の向上も図られ、大きな成果を得ることができました。
こうした成果を踏まえ、情報社会により対応した教育環境を整えていくことが、研究の終了する来春以降の課題でしょう。VODシステムは、研究授業にとどまらず、各学校の授業で実際に活用されつつあり、順次軌道に乗っていくと思われます。
「市民とIT社会の接点として」
・・・個性ある地域社会創造の推進役として、今後の抱負をお聞かせください。

IPブロードバンド時代が本格化する中、高速・大容量の情報通信を利用することは市民生活にとってもどんどん身近な存在になっていくはずです。市民とIT社会との接点として、先端的なシステムや充実した設備を眠らせることなく活用し、市民の情報リテラシーの向上を図っていくことが、当センターの重要な役割と認識しています。
また、長野市はマルチメディアモデル市役所展開事業の協力市となっており、行政全体として先進的なIT利用に取り組んでいます。今後、電子市役所の稼動による行政サービスの向上や、インターネットを活用した地域活性化への施策をさらに進めて行きたいと考えています。
《Profile》
長野市フルネットセンターは1998年4月オープン。子どもから大人まで、一般から企業人まで、誰もが気軽にマルチメディアを体験できるスペースとして親しまれている。
http://www.city.nagano.nagano.jp/ikka/jouhou/center/index.html

長野冬季オリンピックを契機に長野市に整備された広帯域の光ネットワーク網やVODシステムなど、最先端のハイテク技術を、未来を担う子どもたちのために利用したいという、長野市をはじめとする地域の方々の要望により、NTT東日本長野支店が共同研究を行う形で「長野市マルチメディア教育利用共同研究」事業はスタートしました。
試行錯誤の繰り返しの中、確認できた数々の研究成果は、教育におけるマルチメディア利用の可能性と普及の必要性について示唆することができたのではないかと考えます。ブロードバンド時代を指向したこの先駆的な取り組みが、長野市に留まることなく長野県、そして全国への普及の第一歩となることを願って止みません。

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