=『雪見』など新しいタイプのお客様が急増。
海外からも予約が入る、インターネットならではの可能性=


●Interview
らんけい
嵐渓荘 専務
大竹 啓五さん



「自分を伝えるには客観的な視点が必要」
・・・どうしてHPを立ち上げようと考えられたのですか?また、どの辺に注意をして制作されましたか?

父が旅館の亭主で、私も家業を継ぐために1998年の夏、東京から帰ってきました。でも最初はやることがなくってね。ただ、コンピュータだけはできたので、その年の冬に立ち上げました。当時、新潟ではまだまだでしたが東京ではインターネット全盛という感もあって、全国では普及しているんだし「旅館なんだからやった方がいいのでは」という危機感もありました。
また「こんないい宿があるのに!」って宣伝したかったのです。テレビやチラシだとコストが高いけど、HPならほとんどかからないですから。
注意したのは『いかに正しく伝えるか』ですね。私も最近インターネットでトマトを買ったのですが、あんまり美味しくなくって(笑)。でも1箱3,000円だし「失敗したな」って思えばいいけど、宿屋は値段がそこそこ高いですから「失敗したな」って思われたくないのですね。その点HPはたくさんの情報を伝えられるから、お客様に納得して来ていただきたいのです。
でも、自分の宣伝をするのでどうしても良く言いたくなります。それで最初は失敗もしましたが、本当のことを伝えるために、他からはどう思われるか『客観的に自分を見られる視点を養わなければ』と思いました。
「泊まりに来ないけどHPファンが急増中」
・・・制作にあたって苦労された点は?またアイディアが豊富で楽しいHPですがどこで作り方をおぼえられたのですか?

好きでやっているので苦労した、ということはないのですが、最初は従業員の視線が痛かったですね。朝から晩まで、嬉々としてやってましたから(笑)。よく「時間の無駄だ。業者さんに頼めばいい」って言われました。でも『自分が宿屋を一生懸命やっていることを伝える手段』としてインターネットはとても自由がきくし、そういう意味で私は自分で作るものだ、と思っていましたから。
制作は全部独学です。ソフトはドリームウィバー。デザインで融通がきくし、色使いがきれいに仕上がる。あとは何度もやってみて、その経験の積み重ねです。アイディアやシステム等は、本当にたくさんページを見て工夫しました。実は、お客様からのアドバイスも多いんですよ。


・・・HPへのお客様の反応はいかがですか?

ええ、評判いいですよ。最近は「お宅のHPが一番良かったから決めて来たよ」なんていうお客様もチラホラ出て来て嬉しいですね。たいていの方は最初は「いいね」と言ってくださいます。でも、仲良くなってくると「やっぱり、ここがね・・・」とか言い出すんですよ(笑)。ふらっとHPに遊びに来られた方で本職のWebデザイナーもいらしたんですが「ナビゲーションが悪い」とか手厳しいチェックも受けました。
そんなことを反映させながら今のかたちになったのですが、おもしろいことに「嵐渓荘には行ってないけどHPはファンだよ」っていうお客様が増えているんです。それでこっちも強気になって「じゃあ、何で泊まりに来られないんですか?」ってアンケート取ったりして(笑)。
「冬期の宿泊客に効果が」
・・・HPの効果は集客面などでは具体的にどのように現われていますか?

予約に直接結びつき始めたのは2000年の2月からです。それを境にして急速に増えました。インターネットの普及率の影響だと思いますよ。予約数では全体の10%くらいでしょうか。HPに登録されているお客様も常に3,000人程いらっしゃいますから、管理もたいへんになりました。
また、以前なら1〜3月はとても暇で、1日に1組あるかどうかくらい。でも、今日は平日なのに10組程、県外から雪を見にいらしてます。意外と60代くらいの方がHPを見ていますね。また若いカップルも多くなりましたよ。クリスマスも予約が増えて、館内もラブラブなムードになって(笑)。
私が温泉のサイトにもちょくちょく顔を出しているので、いわゆるマニアの方も増えました。今度オフ会がここであるんです。お客様の層にも幅が出て来ましたね。
「アメリカからも挙式の依頼」
・・・HPを作られて面白かったことは?

私が東京を去る時「いつかスカンジナビア半島の果てからもお客さん来るところにするよ」なんて言ってたら本当にそこからメールが来まして。(笑)スウェーデン人で、お客様じゃなかったんですがHPを見て研修に来たいって。メールをやり取りして、昨年2ヶ月程研修していきましたよ。
あと、昨年韓国のテレビで紹介されて、露天風呂でお粥を食べてる映像が流れたんですがインパクトがあったらしくて(笑)。HPを見て、よくいらっしゃいますよ。
他にもアメリカで働いていた新潟の方が帰国して結婚する時に式場をここに選んでくれました。打ち合わせも全部メールでやり取り。大変でしたけど楽しかったですよ。
「コミュニケーションの有効な道具」
・・・今後の展望と、新しくHPを作られる方へアドバイスをお願いします。

そうですね、展望は温泉サイトを私たちが批判する、逆パターンのページを作ってみたいですね。
これから作ろうとされる方へは、本当にすぐにでもやってみてください。インターネットはとても有効なコミュニケーションの手段、道具ですから。

《Profile》
新潟県下田村にある嵐渓荘は創業70余年、宿泊客の半数がリピーターという山間の閑静な一軒宿です。
新潟県下田村長野1450  TEL0120−117−284
http://www.rankei.com

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