地方のICT戦略25
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食品の生産・加工・販売をする企業として、また一部上場企業として、企業が果たすべき役割は何か。大切にすべきものは何か。
今回紹介するホクト株式会社のICT(情報通信技術)戦略は、常にその基本を逸脱することなく進められてきた。「むしろ保守的」という姿勢には、「安全」をコストダウンの対象にはしないことへの誇りが感じられる。
ホクト株式会社

ホクト株式会社 
管理本部 経理部 業務課 課長
渡辺 正広さん(右)

管理本部 総務部 総務課 主任
柳澤 浩一さん(左)

●Interview
ホクト株式会社
管理本部 経理部 業務課 課長
渡辺 正広さん(右)

管理本部 総務部 総務課 主任
柳澤 浩一さん(左)



企業の成長に合わせ
ICTの充実が不可欠に

・・・研究開発、生産、販売、さらにはグループ企業と、各地に数多くの拠点をお持ちの御社で、ICTをどのように活用なさっているか、大変興味深いのですが。

渡辺課長(以下渡辺さん)
 社内的には、生産管理、出荷管理、販売管理、そして総務関係業務の管理といった情報管理ならびに通信を管理する基幹システムが中心ですね。加えて、国内27の拠点をつないで営業戦略や販売実績などを話し合うテレビ会議システムを運用しています。

  一方、社外的にはインターネットホームページを活用して、市場の一般のお客様への広報活動、株主様への情報提供、採用情報の提供などを行っています。

  組織としては、私どもの業務課を統括部署として情報を一元化し、各部門に管理責任者を置いて、それぞれの有機的な連携を図っています。

・・・ICT化推進の契機は何だったのでしょうか。

渡辺さん
  営業規模の拡大と、拠点の増加に伴い、情報通信網の確立が不可欠になったのです。きのこの資材卸から食品を生産販売する企業への業態転換も、情報化を進めるひとつのきっかけだったといえるでしょう。

柳澤主任(以下柳澤さん)
80年代中頃、スーパーの営業担当者の端末からオンラインで受発注できる体制を電話回線を使って始めたのを皮切りに、NTTのフレームリレー回線、そして光回線へと、時代に応じてインフラの切り替えを図りながらデータ通信の高速化、大容量化を実現してきました。現場の作業・業務を効率化させて社員の負担軽減を図るのはもちろんですが、情報伝達のスピードをアップさせ、スーパーなど流通業のお客様の先進的なコミュニケーション手段に対応させていく必要もありました。2009年度の段階で、すべての拠点の光回線化を完了しています。

  それに伴い、全拠点を結んでテレビ会議 を行うことが可能になりました。出張コストや移動時間の大幅な低減が実現したのに加え、必要に迫られていた幹部クラスの会議頻度を向上させることができ、非常に役立っていますね。

渡辺さん
  さらに足回りの強化を図ることを目的に、新規の基幹システムの構築を進めているところです。

一に安全、二にコスト
企業の使命として安全を最優先

ホームページ・・・ICTを統括される上で、御社が最も重要視しておられることは何でしょうか。

渡辺さん
何をおいても「安全」が最優先であるということに尽きます。
当社の基幹システムは、公衆回線に一切頼らず、すべて専用線に一本化し、無線LANも含めた外部からのアクセスを一切シャットアウトしています。この点はデジタル化をスタートさせた当初から一貫しています。もちろん、内部におけるアクセスもすべてログを取り、データの加工や持ち出しができないよう細心のセキュリティ対策を講じています。

柳澤さん
目的のひとつは、情報の漏洩、流出や、不正アクセスなどの防御といった情報セキュリティへの対策として。もうひとつは、システムダウンのリスクを回避するため。生産、出荷、販売が一元管理されているので、万が一ダウンすると商品の流れが止まり、全国のお客様に多大な迷惑をかけることになりかねません。こうした2つの観点から、安全性を何より重視しているのです。

渡辺さん
実際、新潟中越地震、新潟中越沖地震や苫小牧沖の地震に際しても、当社のシステムは一度もダウンせず、ほんのわずかの遮断もありませんでした。また、日常的な回線トラブル等にも対応できるよう監視体制を確立しています。

柳澤さん
「安心・安全」を最優先するのは、創業者である水野会長(故人)時代からの企業風土といっていいでしょう。食品を扱う企業としての責任であり、同時に、上場企業としてお客様の信頼を裏切ってはならないという使命感も強いのです。この点は、あらゆる現場の社員に徹底されていると感じます。


・・・コスト偏重になりがちな昨今ですが、こうしたお話をうかがうと頼もしいですね。

渡辺さん
コストはもちろん重視していますよ。しかし、システムに関してはあくまでも「安全」最優先。コストダウンのために安全を犠牲にはしないというのが、当社の方針なのです。



ICTのメリット発揮には
社員への教育も大切

・・・ユーザ協会の会員の皆さんへのアドバイスも含め、「地方の企業のICT戦略」について御社のお考えをお聞かせください。

柳澤さん
  ICTのメリットが十分発揮されるためには、社内での教育が非常に重要であると感じています。ミスや事故を起こ さないための使い方を身につけるだけではありません。自分の仕事が社内のどんな業務にどう影響していくのかを、現場のスタッフ一人ひとりが理解することで、個々の作業が大きな意味を持つようになります。その結果、ICTはその機能をより効果的に発揮するようになるのではないでしょうか。それにつけても、本当にその企業のニーズに合致する情報インフラを導入することが、まず重要なのではないかと思います。

渡辺さん
当社の場合、事業規模の拡大にシステムがなかなか追いつかず、現場の切実な要請に対応しながら、後追いでICTを拡充してきたというのが、正直なところです。そのためインフラや運用ノウハウに関しては必ずしも先進的ではなく、むしろ保守的な側面の方が強いといえるでしょう。
しかしそれゆえに、システムありきにはならず、「安全」を最優先するという企業の信念がブレずに必要なシステムを適正に運用するという現状に至っているという面があるのも事実です。
今後、グループウエアの導入なども視野に入れながら、さらなる拡充を模索していくわけですが、その際もメリット、デメリット、セキュリティの問題などを十分に検討・研究し、当社の業務や社風に合うものを導入していくことになるでしょう。
基本となるインフラを提供するNTTさんには、サービスエリアのさらなる拡大を切に望みたいと思います。


《Profile》
●ホクト株式会社
事業内容/きのこ栽培用資材の製造販売を起点とし、きのこの生産・加工・販売を展開。創業以来、自社研究開発によるエノキダケ、ブナシメジ、ヒラタケ、エリンギ、マイタケ等の新品種を続々と発表し、一年を通じ、きのこが食卓にのぼる食文化を普及させてきた。アガリクス開発によりメディカルの分野でも注目されている。平成11(1999)年、東証第一部上場。
長野県内をはじめ東京、大阪、愛知、北海道、宮城、新潟、富山、香川、福岡、埼玉等に拠点を持ち、ICTによる情報管理の一元化を推進中。
設立/昭和39(1964)年 
本社/長野県長野市南堀138―1
代表取締役社長/水野 雅義
TEL/026―243―3111(代表)

http://www.hokto-kinoko.co.jp/

 

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