地方のICT戦略26
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創業当初からの医薬事業を中心に、時代に適応しながら事業拡張を進め、地域や国境の壁を越えた企業活動を展開してきた鍋林。その柔軟さ、果敢さの背景には、1960年代に早くもコンピュータを導入し、70年代には全社をオンラインで結ぶといった、常に先進的なICT施策があった。創業120周年の今年、未来へのチャレンジを支える次なる施策も着々と進行中だ
鍋林株式会社

鍋林株式会社 
執行役員 業務総務グループ長
丸山 渉明さん

●Interview
鍋林株式会社
執行役員 業務総務グループ長
丸山 渉明さん



複数の通信回線を
光回線で一元管理

・・・多くの事業部、拠点をお持ちの御社で、ICTをどのようにご活用になっておられるかお聞かせください。

丸山さん
 電話による音声通信にはじまり、データ通信、営業用モバイルパソコン、そして基幹システムと、ICT無しでは企業活動がストップするといっても過言ではありません。万が一、回線が障害をきたした場合にも、バックアップとして携帯電話FOMAを利用するなどの措置を講じています。
  1967(昭和42)年にコンピュータを初めて導入して以来、ICT化に関しては地域のなかでも比較的先進的な取り組みをしてきた当社ですが、音声やデータ等の情報を統合し、一元化して管理することが課題となっていました。
  創業120周年という節目を迎えるにあたり、昨年4月に、全営業拠点の通信回線のデジタル化が実現しました。それを機に、NTTさんの光回線によって、一元管理化が進み、より有効にICTを活用する環境が整いつつあるという状況です。

・・・一元化にあたり、NTTをお選びになった決め手は何だったのでしょうか。

丸山さん
通信各社からそれぞれ魅力的な提案をいただきましたが、情報を一元化するメリットを多面的に検討した結果です。効率化、コスト面、インフラ工事の各方面への影響、携帯電話やモバイルでのデータ通信の使い勝手、社内の既存システムとの連携など、さまざまな観点で検討を重ねました。複数社に分散発注するという選択肢もありましたが、障害時、災害時の対応や、セキュリティ面を考えると、あえて複雑にせず、拠点数が多く総合力で信頼のおけるNTTさんと組むのが安心であろうとの判断もありました。
当社の事業分野は多岐にわたります。医療・介護事業では、病院や施設の患者さんに対し、24時間体制のケアが要求される現場もありますし、工場関係ではオペレーションにも、管理にもネットワークを使ったデータ処理が不可欠です。こうした現場では通信回線が決して遮断されないこと、万が一遮断される事態が起きても、即座に復旧または代替システムに移行できることが、システムを構成するうえで非常に重要な条件となります。この点で、最も信頼できるのがNTTさんでした。
当社がユーザ協会の役員を仰せつかっており、NTTさんのICT情報に身近に接していたことも理由のひとつに挙げられるでしょう。

PC活用のTVミーティング、
スマートフォンの端末化など
新施策も検討中

・・・1960年代にコンピュータを導入されたとうかがって驚きました。非常に先進的な取り組みをされてこられたのですね。

丸山さん
初代社長が進取の気質に富んだ人で、その社風が現在にも受け継がれているのです。1976年にはテレックスによるデータの送受信が行われるようになり、4年後には全社がオンライン化されました。また、営業担当者も早い時期からポータブル端末を持ち、電話回線を使って受発注業務を行っていました。
実は、医療用医薬品や医療・介護機器販売の業界大手は、ICTに関し非常に先進的です。そのためお取引先となる企業・病院も抵抗なく取り組んでおられるケースが多く、そうしたニーズによりきめ細かくお応えるするために、常に最新のICTと無縁でいるわけにはいかなかったという経緯もあるのです。

・・・ICTのめざましい進化に、柔軟に対応して来られたわけですね。

丸山さん
テレックスがFAXに変わり、大型のオフコンがパソコンに変わって、あらゆる情報がデータとして通信されるようになった。改めて振り返ってみると、隔世の感がありますね。今回、行っている通信回線のデジタル化と、それにともなう情報の一元管理化も、当社の歴史に刻まれる施策のひとつとなります。
現在、国内外の全拠点のIP電話化を進めており、これは今年度中に移行が完了する予定です。また、創業120周年に合わせて新築した医薬物流センターが4月末に完成する見込みですが、ここでの物流管理は一元化された新たな管理システムの一環として行われます。受発注、物流、販売、在庫・倉庫、財務・経理・債権等の管理等を、今回の一元化により総括的に行うことができるようになるわけです。


・・・TV会議システムの導入に関しては、どのようにお考えでしょうか。

丸山さん
会議システムをインフラとして導入するのではなく、社員個々のパソコンにカメラを取り付け、IP電話によるTV電話でミーティングを行い、コミュニケーションを図る方法を模索しています。当社では直接顔を合わせて議論することによってアイディアや提案を醸成していくことを重視しているため、TV電話も会議というよりは情報伝達の手段ととらえ、当面はこのスタイルで様子を見る方向です。
また、営業担当者に貸与している携帯電話を将来的にスマートフォンを利用する、受発注業務に活かす方向で検討を始めたところです。ICTへの取り組みは、常に企業活動と一体で、終わりがありませんね。



新技術、新インフラを
自社の業務にどう活かすか

・・・ユーザ協会の理事というお立場から、「地方の企業のICT戦略」について会員の皆さんへメッセージをお願いいたします。

丸山さん
  ICTの進化はまさに日進月歩で、その付加価値もまた目を見張るほど大きくなっています。会員の皆さんは業種も業態も多岐にわたるわけですが、こうした技術やサービス、そして付加価値を自社の業務にどう活かせるか、常に目を向け、検討、模索を続けることが、活用の秘訣になるはずです。
そのために必要な情報収集を効率よく行ううえで、ユーザ協会は大変頼もしいパートナーです。定期的に提供される最新のICT情報や、さまざまな企業における具体的な実例のなかに、自社の施策に活かせる内容やビジネスのヒントを見いだせることでしょう。ぜひとも上手に情報を仕入れ、時代に対応した事業展開にお役立ていただきたいと思います。

・・・お忙しいところ、どうもありがとうございました。


《Profile》
●鍋林株式会社
事業内容/江戸時代は松本藩御用達の金物鋳造業。明治期に薬種・雑貨商として創業し、時代を先取りしながら業種拡大。現在は医療用医薬品、医療・介護機器、基礎化学品、医薬原料、半導体薬品、電子材料、樹脂、設備機器、食品原材料、食品包装資材、OA機器コンピュータの販売、環境デザインの設計・制作および取扱品目の輸出入を展開している。
松本・東京の本社を中心に国内23拠点、海外8拠点の情報一元化を推進。
設立/明治24(1891)年 
本社/〒390―8722 松本市双葉8番10号
TEL/0263―27―6545(本社業務総務グループ)
代表取締役社長/藏井 和義

http://www.nabelin.co.jp/

 
 

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