地方のICT戦略27
1920へ
21へ22へ23へ
24へ 25へ 26へ
本社を置く上越市周辺を主たる営業エリアとする総合建 設部門と、東京に本部を置き、全国に展開する運送部門。性 格の異なる2つの事業部門を持つ田中産業は、それまで事業 部ごとだった通信網と情報管理を本社に集約、一元化するこ とを目的に、通信インフラの全面見直しを敢行。専用の光回 線を活用し、利便性の向上と確実なセキュリティに加え、通信 コストの低減も実現させた。付帯設備として導入したTV電 話も、今では事業活動になくてはならない設備となっている。
田中産業株式会社

田中産業株式会社理事 廣瀬 一夫 さん(写真 右)営業課長 蒲生 英之 さん(写真 左)

●Interview
田中産業株式会社
理事
廣瀬 一夫さん(写真 右)

営業課長
蒲生 英之さん(写真 左)



電話機の取り換えを機に
通信インフラの全面改革

・・・光回線への切り換えを図られた経緯をお聞かせください。

蒲生営業課長(以下蒲生さん)
 社内の電話機が15年の使用を経て古くなり、取り換えの必要が生じたのをきっかけに、通信システムの全面見直しを行うことにしたのです。電話機の整備にあたり、光の専用回線を導入し、アナログ回線から全面移行する方向で検討したわけですが、その機会を利用して、従来、建設・運送の事業部ごとに別々だったシステムを統合し、本社で一括管理できるようにしようと考えました。当然、一元化による通信・通話コストの削減と、それまで事業部ごとに行っていたセキュリティ対策の経費を削減することも狙いでした。

廣瀬理事(以下 廣瀬さん)
 切り換えにあたり、NTTさんにはグループ会社の枠を越えたあらゆるサービスを提案してほしいとお願いしました。実はグループ会社によってサービス地域や内容、料金体系などに違いがあることに、かねて不満を抱いていたのです。今回はその点もきたんなく吐露したうえで、NTTさんとして最善の取り組みに期待したいとお伝えしました。
  その結果、さまざまなケースを想定した非常にきめ細かい提案をお出しいただき、利便性、安全生、コストの面から徹底的に検討を重ねることができました。

・・・切り換えの際、特に留意されたのはどのような点でしょうか。

蒲生さん
  当社では長年、インターネットを活用したグループウェア「サイボウズ」による情報管理を行っています。今後もそれを生かしながら、なおかつ、建設部門と運送部門のスムーズな連携を図るという大きな課題がありました。それまで建設部門はレンタルサーバーを活用し、運送部門は独自のサーバーを自社運用していましたので、整合性を持たせながら統一するのはなかなか困難だったのです。また、各部門での技術的な運用レベルにも格差がありました。
そのクリアのために、上越、東京を何度も往復し、NTTさんとも入念に打ち合わせを重ねながら、苦心して調整を進めました。

廣瀬さん
  インフラの整備といっても何でも新しくすればいいというわけではなく、企業風土にあった使い勝手や仕組みでなければ、先進の技術を活用する意味がありません。NTTさんには我々使い手が何を望んでいるかを十分知っていただいたうえで、より良くなる提案をしていただきたいとお願いしたわけですが、その点はさすがですね。技術面のすばらしさはもちろん、きめ細かな対応においても、私どもの期待にみごとにお応えいただきました。

各拠点を結ぶTV電話に
思いがけない効用を発見

・・・テレビ電話の導入も今般の切り換えがきっかけだったのですね。

廣瀬さん
 そうです。全国の拠点に本社からの指示を出すのに、従来は電話、FAX、メールを活用してきましたが、やはり互いの顔を見ながら会話のできる手段が必要と考えました。光回線の利用により、テレビ電話が意外に低コストで実現することがわかり、全拠点ならびに関連会社で「フレッツフォンVP2000」を採用することにしたのです。表情を見ながら会話ができるというのは、指示を出す方にとっても、指示を受ける方にとっても非常にいいことですね。ニュアンスも含めて情報が正確に伝わりますから。またデータを見せ合って確認し合うなど、必要なやりとりが瞬時にできるのでタイムロスの削減にも有効です。
  当初は、テレビ電話は光回線の付帯設備として、NTTさんの提案で採用したわけですが、使い始めてみると、意外な効用がありました。運送部門のドライバー一人ひとりの点呼を、運行管理者が顔を見てできるので、表情や顔色から健康状態や疲労の度合いを確認できるのです。

蒲生さん
 当社ではもともと安全管理に非常に厳しい基準を設けています。仮眠は車内ではさせず、必ず部屋で休ませるとか、運行状況の定期連絡を確実に入れさせるなど、厳格な行動指針があるのですが、テレビ電話を導入したおかげで、健康チェックの精度がさらに高まりました。これは想定外のメリットでしたね。

・・・テレビ会議を開催されることはありますか。

廣瀬さん
 トップからの指示を、幹部がモニターの前に集まって受けたり、拠点同士で打ち合わせをしたり、という使い方はしています。しかし、現状では3つ以上の事業所をリンクして会議ができるシステムにはなっていないため、会議というとちょっと難しいですね。

蒲生さん
 臨時に自席へ持ち運び、3台をオンにして、互いに画面を確認しながらミーティングを行っているのも見かけますが、ごくまれなケースでしょう。今後の機能に期待したいですね。

ICTの危機管理も
災害を意識した目線が必要

・・・3月の大震災では被害に遭われた拠点もあったのでしょうか。光回線による新インフラが役立った点などありましたらお聞かせください。

廣瀬さん
 幸い危機的なダメージを受けることはありませんでしたが、東北地方の拠点との連絡は一時ストップしました。特に仙台は復旧までに時間がかかりましたね。数年前の中越地震の際、メールによる連絡網が非常に有効だったため、当社では災害時にはメールを伝達手段にすることで意思統一ができていました。しかし今回はそれもダメでしたね。想定を上回る大災害だったということでしょう。

蒲生さん
 実は光回線への全面移行に際し、停電時に使えなくなる可能性があるというのは、大きなデメリットだと感じていました。しかし、今回の震災の2ヶ月ほど前に、朝、2時間にわたって停電がありまして、その際、バックアップシステムが起動して業務に支障なく通信を利用できたので、改めて信頼を高めていました。
 しかし実をいえば、NTTさんのアドバイスもあり、万が一に備えて、あえてアナログ回線を廃棄せずに残してあるのです。震災の報道などを見て、残しておいてよかったと思いました。今後、光化はさらに進むと想定されますが、危機管理上、アナログも生かして併用するという発想も改めて見直されるのではないかと感じています。

・・・最後にユーザ協会についてご希望などお聞かせください。

廣瀬さん
 通信インフラの刷新から1年が経過しましたが、コスト面の精査をもっと進めていく必要を感じているところです。これからはどの企業も、いかにコストを圧縮して付加価値の高いサービスを受けるかを重視するでしょう。当社がユーザ協会に加入したのも、携帯電話料金の割引や著名人の講演会などのメリットを考慮してのことでした。こうしたメリットをもっと積極的に提言し、会員のICT向上に貢献していただくことを期待します。

・・・お忙しいところ、どうもありがとうございました。

 

《Profile》
●田中産業株式会社
事業内容/地元上越市を中心とする総合建設業および全国展開する運送事業の多角経営企業として着実な業績を上げている。「地域とともにあるグッド・カンパニーをめざす」ことを企業理念に、建設事業では最高品質の施工で地域還元し、運送事業では事故の未然防止と環境にやさしい車両の使用で安全と環境問題に力を注ぐ。
新潟をはじめ東京、大阪、宮城、岩手、山形、福島、埼玉、茨城、長野、和歌山など全国に展開する事業拠点をICTで結び、情報管理の一元化を推進している。
設立/昭和36(1961)年
本社/〒943-8505 新潟県上越市土橋1928番地
TEL/(025)525ー1212
代表取締役社長/田中 利之

http://www.tanakaind.co.jp/

 

copyright(c)2003JapanTelecomUsersAssosiationNagano